PHP

【徹底解説】PHPとは|選ばれる理由と弱点

Webサイトやアプリを作りたいと思ったとき、「どのプログラミング言語を学べばいいのだろう?」と悩む方は多いでしょう。

数あるプログラミング言語の中で、PHP(ピー・エイチ・ピー)は初心者に特におすすめできる言語の一つです。

なぜなら、PHPは文法が比較的シンプルで学びやすく、かつWeb開発の現場で広く使われているため、学んだ内容が実践に直結しやすいからです。

実際、ブログや企業サイトの多くがPHPで動いており、私たちの身近なところでもPHPは活躍しています。

本記事では、「PHPとは何か」という基本から始めて、PHPでできることや特徴、具体的な使い方までを網羅的に解説します。

初心者の方にも分かりやすいよう、専門用語はかみくだいて説明し、イメージしやすい例を交えて進めていきます。

読み終えるころには、「PHPでこんなことができるんだ!」「まずはここから始めればいいんだな」とイメージが掴めることでしょう。

それでは早速、PHPの世界を覗いてみましょう。

PHPとは何か – 基本概要と役割

PHPとは、Webサーバー上で動くスクリプト言語の一つです。

正式名称は PHP: Hypertext Preprocessor”(ハイパーテキスト・プリプロセッサ)と言います。

一言で表すと、「Webページを動的に生成するためのプログラミング言語」です。

では「動的に生成する」とはどういう意味でしょうか?

通常、WebページはHTMLというマークアップ言語で書かれていますが、HTMLだけで作ったページは基本的に静的コンテンツです。

静的コンテンツとは、誰が見てもいつ見ても内容が変わらないページのことです。

例えば会社概要のページや、作りっぱなしで更新しない簡単なサイトは静的コンテンツです。

これに対しPHPを使うと、ページを表示するたびにプログラムが裏で動いて内容を生成する「動的コンテンツ」を作ることができます。

ブログの記事ページを例にすると、訪問するたびに最新の記事一覧を表示したり、ユーザごとに表示内容を変えたりできますが、これらはPHPのような動的言語が使われています。

PHPプログラムは、Webサーバー上でサーバーサイドで実行されます。

私たちがブラウザでURLを開くと、その裏側でサーバーがPHPのコードを実行し、その結果としてHTMLを生成してブラウザに送り返します。

ブラウザは送られてきたHTMLを表示するだけなので、ユーザーからはPHPのコードは見えません

この仕組みによって、セキュリティを保ちながら複雑な処理をサーバー側で行い、必要な結果だけをユーザーに見せることが可能になります。

まとめると、PHPは「Webサーバー上で動くプログラムを書ける言語」であり、「動的なWebページを作るための道具」です。

1995年に誕生し、20年以上アップデートを重ねながら現在(※2025年時点)も広く使われ続けています。

PHPの特徴とメリット

PHPが初心者におすすめと言われるのには、いくつか理由があります。

ここではPHPの主な特徴やメリットを紹介します。

「なぜPHPを使うのか?」という疑問の答えになるポイントです。

文法がシンプルで初心者にも学びやすい

PHPの第一の特徴は、文法(コードの書き方)が比較的シンプルで直感的だということです。

他の言語、例えばJavaやC言語では、変数を使うときに「この変数には数字が入る」といった型の宣言が必要ですが、PHPではそれが不要です。

例えば、Javaであれば「int x = 5;」のようにint(整数型)と指定してからでないと数字を扱えません。

しかし、PHPでは単に「$x = 5;」と書くだけで変数$xに5を代入できます。

型はPHPが自動判定してくれるので、プログラマは細かいことを意識せずに書き始められるのです。

また、PHPは英語に近い構文が多く、初めて見ても何となく意味が推測しやすいという利点があります。

例えば、画面に文字を表示する命令はecho(エコー)ですが、英語で「echo」は「反響する/音を返す」という意味で、まさに「文字を返す(出力する)」イメージに合っています。

条件分岐もif、繰り返しはforwhileと、他の多くの言語と共通のキーワードを使うため、プログラミング全般の入門としてもとっつきやすいでしょう。

このように習得しやすい文法のおかげで、プログラミング自体が初めての人でも挫折しにくいというのがPHPの大きなメリットです。

実際、「プログラムを書いてすぐ動かせる」という体験を積み重ねやすいので、楽しみながら学習を進められます。

動的なWebページが簡単に作成できる

PHPを使えば、動的なWebページを手軽に作れます。

動的なWebページとは、ユーザーの操作や入力、または閲覧するタイミングによって表示内容が変化するページのことです。

静的なHTMLでは、ページの内容はあらかじめ決め打ちですが、PHPを用いるとプログラムが状況に応じてページを組み立ててくれます。

例えば、掲示板やブログのようにユーザーが投稿した内容を蓄積して表示するページは動的ページの代表です。

あるいはショッピングサイトで、ログインしたユーザーごとに「おすすめ商品」を変えたり、閲覧履歴に応じて表示を調整したりするのも動的な処理です。

これらはすべてPHPのようなサーバーサイド言語が関わっています。

PHPにはHTMLに直接埋め込む形でコードを書けるという強みもあります。

後述しますが、PHPのコードは<?php ... ?>というタグの中に記述します。

このタグをHTMLファイルの中に差し込むことで、HTMLとPHPを混在させたファイルを作成できます。

Webサーバーはそのファイルを処理する際に、PHP部分を実行して結果(HTML文字列)に置き換えてから、最終的なページを生成します。

つまり「普段はHTML、必要な部分だけPHPで動的に」という使い方ができるのです。

静的コンテンツの中に部分的な動的コンテンツを差し込むような柔軟なページ作りができる点も、PHPの魅力と言えます。

データベース連携が得意

現代のWebサイトは、裏でデータベース(DB)と呼ばれる情報の倉庫と連携していることがほとんどです。

ユーザー情報、商品リスト、投稿記事、コメント…これらはすべてデータベースに蓄えられ、必要に応じて読み出されたり更新されたりします。

PHPはこのデータベース操作を非常に簡単に行えるように設計されています。

特に有名なデータベース管理システムであるMySQLPostgreSQLとは相性が良く、PHPからそれらに接続してデータを読み書きするための関数やライブラリが豊富に用意されています。

例えば、PHPにはPDO(PHP Data Objects)というデータベース接続用の仕組みがあり、これを使うと数行のコードでDBに接続してデータを取り出せます。

具体例を挙げると、PHPを使えば会員登録フォームから受け取ったユーザー情報をデータベースに保存するとか、データベース内の商品一覧を読み込んでWebページに表示するといったことが容易にできます。

こうしたサーバーサイドでのデータ処理とWebページ表示の橋渡しがスムーズにできるのが、PHPの強みです。

Webアプリケーション開発において、データベース連携は避けて通れない重要ポイントなので、そこを簡単に扱えるPHPは初心者にも優しく、かつプロの現場でも重宝されます。

クロスプラットフォーム対応(どの環境でも動く)

PHPは動かせる環境の幅広さも特徴の一つです。

Windowsサーバー、Linuxサーバー、macOS上のサーバー…どの主要なOS上でもPHPは動作します。

開発用PCがWindowsでもMacでも問題ありませんし、出来上がったPHPシステムをデプロイ(サーバーに設置)する際も、ほとんどのレンタルサーバーやホスティングサービスがPHPに対応しています。

さらに、PHPは環境構築が比較的容易です。

例えば自分のパソコン上でPHPを動かす場合、オールインワンのパッケージ(後述するXAMPPなど)を使えば、ApacheというWebサーバーソフトとPHPの実行環境、さらに必要ならデータベースもまとめてインストールできます。

専門的な設定をいちいちせずとも、一括インストーラーで環境が整うため、初心者でもつまずきにくいのです。

このクロスプラットフォーム性のおかげで、「せっかく書いたPHPが別の環境では動かない」といった心配はほぼ無用です。

一度習得すれば、WindowsだろうとLinuxだろうと同じように使えますし、ローカル(自分のPC)で開発してサーバー(本番環境)で動作確認という一般的な流れもスムーズに行えます。

こうした柔軟性は、言語選定において重要なポイントです。

オープンソース&無料で使える

PHPはオープンソースソフトウェア(OSS)として提供されています。

誰でも無料で利用でき、ソースコード(PHP自体の内部のコード)も公開されています。

ライセンス費用がかからないため、趣味の開発から企業の大規模プロジェクトまで、コストを気にせず導入できるのは大きなメリットです。

無料で使えるだけでなく、公式マニュアルやドキュメントも無償で公開されています。

PHP公式サイトには多言語のマニュアルが整備されており、日本語ドキュメントも充実しています。

初心者が学習中に困ったとき、ネットで検索すれば公式情報や有志による解説記事が多数見つかるでしょう。

これはPHPの利用者コミュニティが大きく活発だからこそです。

仮にエラーに直面したり実装方法で悩んだりしても、Web上に質問と回答の蓄積が豊富にあります。

長年人気の言語であるがゆえに、困りごとの多くは既に誰かが経験し解決策が共有されています。

検索エンジンにエラーメッセージを入れれば、大抵の場合Stack OverflowやQiitaなどのQAサイトで回答が見つかるはずです。

この情報量の多さは、独学者にとって大きな安心材料と言えるでしょう。

Web業界での実績豊富(WordPressや主要サービスで採用)

PHPは長い歴史の中で数え切れないほどのWebサービス構築に使われてきた実績があります。

その象徴的存在がWordPressです。

WordPressは世界中のWebサイトの約40%(※統計による)は利用していると言われる超有名CMS(コンテンツ管理システム)ですが、このWordPressがPHPで作られています。

つまり、PHPを習得すればWordPressのカスタマイズ(テーマやプラグインの作成)ができるようになり、自分のブログを機能拡張したり、仕事でWordPressサイトを構築する場合にも大いに役立ちます。

また、かつてFacebookが初期にPHPで開発された話は有名です(※現在は独自言語に移行しましたが、PHPがFacebookの礎となりました)。

他にも、Wikipedia(オンライン百科事典)や日本の旅行予約サイト「一休.com」などもPHPで構築されています。

中小のウェブサービスはもちろん、世界規模のサービスでも使われてきた実績があるため、PHPのスキルは幅広い現場で通用します。

さらに、PHPにはこの後触れるフレームワークも充実しており、大規模開発にも耐えうるエコシステムが整っています。

Laravel(ララベル)やSymfony(シンフォニー)といった人気フレームワークを活用することで、開発効率を上げつつ堅牢なアプリケーションを作れるため、企業でもPHPを採用するケースが多々あります。

「PHPは簡単だけど大規模には不向きなのでは?」と思われがちですが、実際には規模の大小問わず活躍している言語なのです。

PHPでできること – 活用例紹介

では具体的に、PHPを使うとどんなことが実現できるのかをいくつか見てみましょう。

身近なWeb機能を例に挙げながら、PHPの活用シーンを紹介します。

フォーム処理とお問い合わせページの作成

Webサイトの「お問い合わせフォーム」や「アンケートフォーム」を思い浮かべてください。

ユーザーが名前やメールアドレス、問い合わせ内容を入力して送信ボタンを押すと、「送信ありがとうございました」と確認メッセージが表示されたり、入力内容が管理者にメールで届いたりしますね。

この一連のフォーム送信処理は、PHPの得意分野です。

具体的には、HTMLで作成したフォームから送られたデータ(名前やメッセージ等)を、PHPが受け取って処理します。

PHP側でデータの内容をチェックしたり(例えば必須項目が埋まっているか確認)、メール送信の機能を使ってサイト管理者宛に内容を転送したり、ユーザー向けに自動返信メールを送ることもできます。

そして処理の最後に、結果ページ(「お問い合わせありがとうございました」ページなど)を表示するHTMLをPHPが生成します。

このように、ユーザーからの入力を受け付けて何らかのリアクションを返すという処理全般がPHPで実装可能です。

お問い合わせフォーム以外にも、会員登録フォームや各種申込フォームなどにも応用できます。

静的なHTMLではユーザーの入力を扱えないため、こうした場合にPHPが不可欠となります。

ユーザ認証機能・ログインシステムの構築

会員制のWebサイトでは、ログインやログアウトの機能が必須です。

PHPはユーザ認証システムを構築する際にも活躍します。

具体的には、ユーザーがログインフォームで入力したメールアドレスとパスワードをPHPで受け取り、データベースに保存されている登録情報と照合します。

認証成功であればセッションと呼ばれる仕組みでログイン状態を記憶し、以後のページ閲覧では「ようこそ、〇〇さん」のようにユーザー名を表示したり、会員限定ページにアクセスさせたりできます。

逆にログアウトボタンが押されたら、PHPがセッション情報を破棄し、再度ログインページへリダイレクト(誘導)します。

このような認証の流れ全般(入力チェック、DB問い合わせ、セッション管理、ページ遷移など)を一手に担えるのがPHPの強みです。

パスワードのハッシュ化(暗号化保存)や、ログイン状態の保持などセキュリティに関わる部分も、PHPには便利な関数が揃っているので、比較的簡単に実装できます。

安全なログイン機能はWebアプリの根幹ですが、PHPであれば初心者から中級者へステップアップする際に、実践題材として挑戦しやすいでしょう。

ブログやSNSなど投稿システムの開発

PHPはブログシステムや簡易SNSの作成にも向いています。

実際、世界で最も使われているブログシステムのWordPressはPHP製ですし、掲示板やミニブログのフリーソフトもPHPで書かれたものが多く存在します。

ブログの機能を考えてみると、記事の投稿・編集・削除、コメントの受付、カテゴリやタグ分類、アーカイブページの生成など、多彩な要素があります。

PHPはこれらをすべてプログラムで実現できます

たとえば新規記事投稿では、投稿フォームからタイトルや本文を受け取り、データベースに保存する処理をPHPで行い、その後自動で記事ページを生成します。

また、トップページやカテゴリページでは最新記事一覧をデータベースから取得して表示しますが、この部分もPHPが担当です。

ユーザーがコメントを送信すれば、PHPがそれを保存し、記事ページに紐付けて表示する、といった具合です。

SNS的な機能、例えばユーザー同士のメッセージ交換や「いいね!」といったリアクションの処理も、PHPでサーバーサイドロジックを組んでいけば作り上げることができます。

リアルタイム性が要求される部分(チャットのような機能等)ではJavaScriptとの連携も必要になりますが、データのやり取りと保存、そしてそれに基づく表示更新といった一連のバックエンド処理はPHPが得意とするところです。

ECサイトのカートシステム・決済処理

ネットショップ(ECサイト)にもPHPは多用されています。

ショッピングカート機能をイメージしてみましょう。

ユーザーが商品を選んでカートに入れる操作をすると、PHPがその情報をセッション(一時的な保存領域)に保持します。カートページを開けば、PHPがセッション内のデータを読み込んで「商品A ×2点、商品B ×1点」のように一覧表示し、合計金額を計算して見せてくれます。

数量を変更したり削除したりする操作も、PHPが受け取って処理します。

購入手続きに進み、ユーザーが住所や支払い方法を入力すれば、それを受け取って注文データとしてデータベースに保存するのもPHPの仕事です。

さらにクレジットカード決済など外部の決済代行サービスと連携する際も、PHPから専用のAPI(※サービス提供のプログラム窓口)に通信を行い、決済処理を完了させることができます。

完了後には在庫データを減らしたり、注文確認メールを送信したりと、必要な後処理も自動化できます。

このように、一連のECサイトの裏側もPHPで包括的に実装可能です。

実際、オープンソースのショッピングサイト構築システム(EC-CUBEなど)はPHP製ですし、中小規模のオンラインショップではPHPを用いたカスタム開発もしばしば行われています。

商品管理、在庫チェック、注文履歴閲覧、ポイントシステムなど多岐にわたる機能を、PHPは部品を組み合わせるようにして開発していけます。

CMS構築・カスタマイズ

CMS(Contents Management System、コンテンツ管理システム)とは、Webサイトのコンテンツを簡単に管理・更新できるようにするソフトウェアです。

前述のWordPressがまさに代表例ですが、他にもDrupalやJoomla!といったPHPベースのCMSが存在します。

PHPを学ぶと、こうした既成のCMSを自分好みにカスタマイズすることもできるようになります。

例えばWordPressでは、テーマ(サイトの見た目やレイアウトを決めるテンプレート)やプラグイン(機能拡張モジュール)をPHPで記述できます。

PHPのコードが読めると、テーマファイルを直接編集してレイアウトを調整したり、必要な機能を自作プラグインとして追加したりすることも可能です。

これは、Web制作の現場では非常に重宝されるスキルです。

WordPressサイトの制作案件では、テンプレート改変やプラグインの改修などPHPの知識が求められる場面が多々あります。

また、規模の大きな企業サイト向けに独自CMSを構築するといったケースでも、PHPは利用されます。

使う人(クライアント)がコンテンツを更新しやすいよう管理画面をPHPで作り込み、表側のサイトに反映させる仕組みを作ります。

PHPは「コンテンツを扱う」処理全般が得意なので、CMS的な需要にもマッチしているのです。

以上、PHPで実現できることをいくつかご紹介しました。

まとめると、PHPを使えば「ユーザーからの入力 -> サーバー側での処理 -> コンテンツ生成」という流れを要するあらゆるWeb機能を作ることができます。

あなたが普段利用しているWebサービスも、その裏ではPHPが動いているかもしれません。

PHPの弱点・デメリットは?

ここまでPHPの良いところを述べてきましたが、言語には何でも万能な面ばかりではありません。

続いて、PHPの苦手とすることやデメリットについても触れておきます。

あらかじめ弱点を知っておくことで、他の技術との使い分けや学習の際の注意点が分かります。

Web以外のアプリ開発には不向き

PHPはWeb開発に特化した言語です。

そのため、デスクトップアプリケーション(WindowsアプリやMacアプリ)やモバイルアプリ(iPhone/Androidアプリ)の開発には基本的に向いていません。

これらの領域では、それぞれ適した言語(例えばデスクトップならC#やJava、モバイルならSwiftやKotlinなど)があり、PHPが使われることはほとんどありません。

言語自体は汎用的にプログラムを書けるので、理論上はPHPでPC上で動くスクリプトを書くことも可能です。

しかし、PHPの強みである「サーバー上でHTMLを作る」という用途から外れるので、敢えてPHPを選ぶメリットがありません。

適材適所の観点で、PHPはWebサーバーサイドという場面に限定して活躍させ、他の分野には別の言語を使うのが一般的です。

例えばゲーム開発やIoTデバイス制御、AIの機械学習処理なども専用の言語・ツールが発達しています。

PHPはそういったユースケースには登場しませんので、PHPだけですべてのプログラミングが完結するわけではないことを押さえておきましょう。

ただし、逆に言えばWebのバックエンドにおいては特化しているので、その範囲で力を発揮すれば問題ありません。

フロントエンドの処理はできない

PHPはサーバーサイドの言語であり、ブラウザ上の振る舞い(フロントエンド)には直接関与できません。

Webページの見た目を作るのはHTMLやCSS、そしてユーザーの操作に応じて画面上で動きを出すのはJavaScriptの役割です。

PHPが生成するのはあくまでブラウザに送る前のHTMLそのものであって、ユーザーのPC内(ブラウザ内)で動くプログラムではないのです。

分かりやすく言えば、PHPは裏方、JavaScriptは表方という関係です。

例えばボタンをクリックしたときに即座に何か画面変化を起こしたい場合、PHPではできずJavaScriptで実装することになります。

一度PHPに処理を任せるには、クリック情報をサーバーに送り(ページ再読み込みやAjax通信などで)、PHPが新たなHTMLを返して…というワンテンポ遅れた流れが必要です。

対してJavaScriptはブラウザ内で瞬時に反応できます。

したがって、ユーザーインターフェースのリッチな操作(画面遷移なしにサクサク動くアプリのようなWeb体験)はJavaScript等のフロント技術に軍配が上がります。

最近はフロントエンドが高度化し、SPA(シングルページアプリケーション)と呼ばれるような、画面の大部分をJavaScriptで構成するウェブアプリも増えました。

その場合PHPなどサーバーサイドは、データ提供のAPIとして裏で支える位置づけになります。

このように、PHPは「見せる部分」を担当しないので、ウェブ開発ではフロントエンドとの役割分担を常に考える必要があります。

とはいえ通常はPHP+HTML+CSS+JSの組み合わせでサイトを構築するので、PHP単体の弱点というよりは設計上の注意点と言えるでしょう。

「PHPだけ知っていればWebサイトが全部作れる」わけではなく、HTML/CSSやJavaScriptの基礎も合わせて学ぶと、より理想的なWeb開発ができるようになります。

コードの自由度ゆえのバグ発生に注意

PHPは初心者に優しい反面、自由度が高いがゆえに注意が必要な点もあります。

型の宣言が不要だったり、厳密な書式を要求しなかったりするぶん、書き手の裁量で様々な書き方ができてしまいます。

これは裏を返すと、人によって書き方がバラバラになりやすいとも言えます。

チーム開発の現場では、PHPは特に**コーディング規約(ルール)を決めて書かないと、可読性が下がったりバグを生み込みやすいです。

例えば、変数の使い方一つ取っても、PHPではスコープ(有効範囲)が広く設定できてしまう関係で、意図しない変数の値書き換えが起きるケースがあります。

また、厳密なエラーチェックをしなくても動いてしまうことが多々あるため、「一見正しく動いているように見えるのに、実はバグを含んでいる」状態になりやすいとも指摘されます。

特に初心者のうちはエラーを出さずに動けばOKと思いがちですが、PHPの場合は警告やNotice(注意)レベルのメッセージだとスルーされて実行が続行されてしまうこともあるので注意が必要です。

こうした特性から、「PHPはバグが発生しやすい」と評されることがあります。

しかしこれは言語自体の問題というより、書き手のリテラシーやコードの管理方法に起因する部分が大きいです。

適切にチェック(最近ではPHPStanやPsalmといった静的解析ツールでコードを検証する方法も普及しています)を行い、テストをしっかり書けば、大規模システムでもPHPで安定した運用が可能です。

逆に言えば、初心者のうちはエラーや警告メッセージを見逃さないようにし、段階的にコード品質にも気を配ることが大切です。

過去に指摘されたセキュリティ面の課題

PHPは歴史が長い分、昔のバージョンではセキュリティ上の脆弱性が指摘されることもありました。

また、先述の通りコードの書き方次第ではセキュリティホール(抜け穴)を生みやすいという側面もあります。

そのため「PHPはセキュリティに弱い」というイメージを持つ人もいるかもしれません。

実際には、PHP自体のセキュリティはバージョンアップで大きく向上しています。

現在主流のPHP 7以降では、速度改善とともに安全性の観点でも強化がされています。

例えば古くは指摘のあった変数の扱い(register_globalsという機能が脆弱性の温床になり廃止された)など、過去の反省を踏まえてより安全な設計になっています。

現行のPHPを正しく使っていれば、言語仕様が原因で致命的なセキュリティホールを生む可能性は低くなっています。

とはいえ、Webアプリのセキュリティは開発者の実装に大きく依存する点はどの言語でも同じです。

PHPを書き始めたら、同時に基本的なセキュリティ対策(SQLインジェクション対策、XSS対策、CSRF対策など)の知識も学ぶようにしましょう。

PHPにはこれらを助ける機能(例えば、データベース操作時にプレースホルダを用いるPDO、出力時にHTMLエスケープする関数、セッション管理機能など)が備わっていますので、それらを適切に使えば必要十分な安全性を確保できます。

以上がPHPの主な弱点や注意点です。

要点としては「適材適所で使う」「コード品質やセキュリティに気を配る」という、ある意味当たり前のことに尽きます。

PHPそのものの欠点は近年だいぶ解消されてきていますので、過度に心配する必要はありません。

ただ、「ここはPHPではなく別の技術を組み合わせよう」「この書き方だと将来バグのもとになるかも」といった判断を適宜できるよう、本記事を読み進めながらも覚えておいてください。

HTMLやJavaScriptとの違いも簡単解説

初めてWeb開発に触れる人にとって、「HTMLやCSSは分かるけどPHPって何が違うの?」「JavaScriptとPHPの違いは?」と混乱することが多いポイントです。

ここで、PHPとHTML、そしてJavaScriptとの違いを整理しておきましょう。

簡単に言えば、役割と動作する場所の違いです。

PHPとHTMLの違い

HTML(HyperText Markup Language)は、Webページの構造と内容を記述するための言語です。

見出しや段落、画像やリンクなど「何を表示するか」をマークアップします。

一方PHPは、前述した通りWebページを生成するプログラミング言語です。

最大の違いは、HTMLは静的コンテンツしか作れないのに対し、PHPは動的コンテンツを作れるという点です。

例えばHTMLだけで作ったお問い合わせフォームは、画面上の入力欄や送信ボタンは作れても、送信後の処理を自分ではできません。

ただの静的なフォーム画面になってしまいます。

そこにPHPが加わると、送信ボタン押下後の挙動をプログラムでき、メールを送ったり、結果ページを見せたりできます。

もう一つの違いは、コードの実行場所です。

HTMLはブラウザが解釈・表示しますが、HTML自体は「実行する」という概念はありません(ただのデータです)。

PHPはサーバー上で実行され、結果としてHTMLを生成します。

最終的にユーザーのブラウザに届くのはHTMLであり、PHPはあくまでそれを作る裏方なのです。

ブラウザから見ると、PHPで作られたページも普通のHTMLページと変わりません。

URLが「〇〇.php」で終わっているページなら、「ああ、裏でPHPが動いてこのHTMLを出力したんだな」と推測できる程度です。

要するに、HTMLはWebページの骨格、PHPは動く仕組みと覚えると良いでしょう。

実際の開発ではPHPとHTMLはセットで使われ、HTML中にPHPを書く形でファイルを作ります。

どちらが欠けても実用的なWebアプリは成立しないので、「静的な部分はHTML、動的な部分はPHP」と役割分担していると考えてください。

PHPとJavaScriptの違い

JavaScriptはブラウザ上で動くクライアントサイドのプログラミング言語です。

PHPと同じく動的な処理を記述できますが、実行場所が異なります。

PHPはサーバーで動き、JavaScriptはユーザーのPC(ブラウザ)で動くというのが最大の違いです。

この違いにより、できることも変わってきます。PHPは上記のようにデータベースと連携したり、ファイルを書き出したりとサーバー資源を使った処理が得意ですが、代わりに画面上で何かアニメーションさせたりユーザー操作に即座に応答したりといったことはできません(それをするにはサーバー通信が必要)。

一方JavaScriptは、ページのDOM要素を書き換えてポップアップを表示したり、フォーム入力内容をその場でチェックして警告を出したりと、インタラクティブなUIを実現できます。

ただし、ブラウザ上で動くのでローカルのPCに保存されたファイルにアクセスするとか、直接サーバーのデータベースに触るといったことは権限上できません。

近年では、JavaScriptでサーバーサイド処理を行うNode.jsという技術もあります。

これにより「サーバーもクライアントもJavaScriptで書く」という選択も増えてきました。

ただ、Web開発全体を見渡すと、PHP+JavaScriptの組み合わせは今なお非常に一般的です。

役割分担が明確でお互い補完関係にあるため、とても相性が良いのです。

簡単にまとめると、PHP vs JavaScriptのポイントは、「サーバーで動くPHP、ブラウザで動くJavaScript」。

そして多くの場合、ユーザー体験を豊かにする部分はJavaScriptが担当し、ビジネスロジックやデータ処理はPHPが担当すると考えてください。

初心者のうちはまずPHPでサーバー側の基本を学び、並行してJavaScriptで簡単な動きを付ける練習もしていくと、将来的にバランス良くスキルを伸ばせるでしょう。

まとめ:PHPを学んでできることの広がり

ここまで、PHPの基礎知識から実践例、さらには周辺のフレームワークやキャリアの話題まで幅広く解説してきました。内容を振り返ってみましょう。

PHPとは何かという定義から始まり、その特徴として初心者に優しいシンプルな文法動的Webページ生成データベース連携などの強みを確認しました。

PHPで実現できる具体例として、フォーム処理やユーザ認証、ブログ・SNS機能、ECサイトのカート、CMSの構築など、Web開発全般に活用できることを見てきました。

一方で、PHPが苦手な領域(フロントエンドや非Webアプリ)や注意点(バグやセキュリティの話)も学び、適切に使うための心得も押さえました。

PHPを身につければ、あなたの作りたいWebサービスを自分の手で形にすることができます。

アイデア次第で、小さなスクリプトから大きなウェブサイトまで、多彩なものを作れるでしょう。

さらに、それはキャリアにも結び付き、多くの現場で求められるスキルとしてあなたを支えてくれます。

初心者の方は、まずはこの記事で得た知識をもとに、環境を整えて簡単なコードを書いてみてください。

エラーが出ても落ち込まず、一つひとつ乗り越えていきましょう。

プログラミングはトライ&エラーの積み重ねです。そして何より、楽しみながら学ぶことが上達の秘訣です。

PHPでできることの広がりをぜひ実感しながら、これからの学習に取り組んでみてください。

あなたがPHPを使って作ったものが、いつか誰かの役に立つWebサービスになる日を夢見て、学びを進めていきましょう。

-PHP